ペルジーノ展2007/05/04 10:00

ペルジーノを見て、ラフェエロの話をするのも何ですが、
「書物の聖母」と呼ばれている聖母子画を見て思いまし
た。ラファエロの筆による幼子イエスはキャンパス上に
立体的に存在し、兄弟弟子の手になるマリアは平板な
線でした。
ラフェエロだけ見るより、こういう対比で見ると、彼の凄
さが実感できます。

また、ペルジーノまでが宗教画で、この後のダヴィンチ
やラファエロは芸術画なんだと、その歴史の区切りが
こんなに明解なのも不思議な気がします。

加えて、妻と出かける時の疲労感というのには独特の
ものが残ります。フとした弾みに、「イヤ、わたしは行っ
ていません」ということになりますと、薄れかけてきた記
憶をどう再建できるのか、自信が持てませんから。

お犬様2007/05/12 21:14

高齢化に警鐘が鳴らされ、既に耳にタコが出来た感
があります。これにはペットも含まれつつあるようです。

その昔、我家でも犬を飼っていましたが、彼女は自ら
の死期を悟るや、忽然と姿を消したのでした。もちろ
ん、そういう話は日常的に溢れていて、動物というも
のはたいしたものだと感心したものでした。

昨日、拝見したお犬様は、既に足腰が立たず、乳母
車に暖かそうな毛布を敷き、お出かけの洋服を纏い、
正座をしてまっすぐ前を向き、人々の呼びかけには
超然とし、既に彫り物であるかの風格を漂わせていま
した。そう、お付きの爺やがかいがいしくお世話をして
おりましたこともお約束通りでした。

汽笛2007/05/21 18:59

SLを飾りし駅で待ちあはせ
汽笛ひびきて時をめぐらす

戒名考2007/05/22 20:00

戒名に関わる混乱がある。

戒名とは、戒を受け、仏弟子として戒を守ることを誓った者に対して
授けられる法名である。したがって本来であれば生前授戒すること
がその本義である。ところが、今は、大多数の者が臨終授戒となっ
ているために「戒名料」という名のお布施が悩ましい存在となってい
る。

その混乱の底には、次のようなものが横たわっている。

それは、仏教葬儀を行えば無条件に付与されるべき基本の戒名に
「戒名料」という条件がついたことと、追善的上位戒名の「戒名料布
施」が一部の寺で高額になったことである。しかし、これには寺院側
のリードだけではなく、民衆側のニーズもあったことが窺われる。

明治の廃物毀釈、第二次大戦後の農地開放により、寺院の経済的
基盤が失われて行った。それでも、昭和三十年代までは地域共同
体が機能していた。そこでは、寺壇関係を基にした暗黙の了解事項
としてのルールが伝統的な儀礼や宗教慣習として機能していた。

ところが、大都市周辺での急速な都市化は寺壇関係を持たない世
帯を急増させてしまい、そのような民衆は先祖信仰よりも現世主義
の傾向が強く、拝金主義的である。
また、寺院側の歴史的背景としては、江戸時代の寺請制度により恒
久的に檀家を確保することが可能となったが、その引き替えに布教
活動は禁止されてしまった。生前に行われるべき布教活動が行えず、授戒も当然のことながら開莚されることが少なくなり、臨終授戒の風
習がここに興った。

「地域社会に生まれ、地域社会で亡くなり、地域の習慣で弔われた
ような風習」が廃れた所では、寺院の経済基盤を再構築する手段と
して、葬儀が注目されるようになった。死亡時の社会的地位に依存
する葬儀、戒名の文字数の増加傾向がみられるようになり、寺壇関
係のない世帯の葬儀では、「寺への貢献」の一時払いが「戒名料」
として定着してきたのである。

浄土宗総合研究所は、平成11年に、「戒名に関する調査」を実施し、
この問題に対する僧侶の意識を聞いている。そこでは、信仰の商用
化(70.7%)、拝金主義的風潮(60.3%)、葬儀のビジネス化(49.7%)が
高い評価を得ていた。

さらに、対応としては次のような考えを打出している。

  「従来の位号・院号授与は地域共同体の中で明示的ではないが
   公開性をもって授与されてきた。(その)地域共同体の崩壊がし
   ている地域では、僧侶と葬家の間で密室的に授与されていると
   の印象が強く、位号、院号の授与基準、授与方法に公開性を持
   たせる必要がある。」

今後検討すべき事項として、位号、院号の授与基準を公開し、「壇
信徒功績点制度」のようなシステムを導入しようと言うのである。

  cf. 「戒名に関する調査について」浄土宗総合研究所 今岡達雄

夏休み推奨図書2007/05/31 20:27

昨年に引き続いて、司書職員から「クーさん、今年も書
いて」 と原稿用紙を渡された。
「中高生を念頭にしてください」と頼まれたが、昨年は
「中」は飛ばしたので、今年こそは若返りたいものであ
る。
一応、記録に留めるべく、これも備忘録替わりに再掲
しておくことにした。


『生命と地球の歴史』丸山茂徳・磯崎行雄著 岩波新書

 生命の歴史について書かれた本は山のようにあ
り、地球の歴史もまた沢山ある。しかし、この二つ
の歴史を相互に深く関連づけて記述された本は珍
しい。大隕石の衝突により恐竜が滅びたことは今や
常識である。しかし、著者は地殻から外側だけの変
動による大絶滅はマイナーだ、と論じる。
では、メイジャーな大絶滅とは、いつ、どのようなもの
であったのだろうか?