回生 #52017/01/06 17:30

斃れてのち元(はじ)まる宇宙輝いて
そこに浮遊す塵泥(ちりひじ)我は

つつがなく今日の一日(ひとひ)を生かされて
点となりゆく紅き陽を見る

重心が萎えたる足にすっと乗り
人間らしく歩み初めたる

笑うこと
死んでしまえばままならず
笑っておこうこころゆくまで

パラダイム転換などと
大それし念(おも)い抱きて歩みつづけむ

一度は死せる我が身ぞ
足元の大地崩(く)ゆるともひたぶるに在れ

六朝の文物学びて尚空しと
云いし古人の夢にあらわる

ありったけの力ふりしぼり生きている我を
元気と人はいえども

萎えたるは萎えたるままに美しく歩み納めむこの花道を


(鶴見和子『花道』より「斃れてのち元まる宇宙」)