バクチは人生の教科書である#32019/01/13 10:32

放浪:

西行は不良のはじまり・・・プロの不良は不良を気取ったりはしない。
不良は、自分では不良だとは思っていない。先ず自分を騙す。不良は、健全な社会的秩序に従わず、安穏な市民生活を拒否し、天然
の旅情に誘われて、意の向くまま、好きなように生きて行く存在・・・
西行は、あの、一見孤独感にみちた淋しい和歌で弱々しげに見え
るものの、実は武闘派である。武闘派に限って弱そうに見せかける。

これを真似した不良に芭蕉がいる。・・・いずれにせよ、五十歳を過
ぎてから、不良は磨きがかかる。それは、それまでの人生経験で、
やっていいことのギリギリのラインを判定できるからである。・・・芭蕉
のライバルは西鶴だった。・・・色に生きるか旅に生きるかは、不良の
大いに迷うところである。・・・芭蕉を真似て「この手でいこう」と決めた
のは蕪村と一茶(一茶の日記は性交の記録ばかり)である。・・・

「父はこれからさすらいの旅に出る」・・・妻に頼るから妻になめられる・・・妻から自立すること、それは先ず料理を作ることから始まる。
下着は自分で洗えばいい。・・・「では、さらばじゃ」と、せめて一、二
年は外国へ行って、自由気ままに暮らせばいい。・・・五十八歳で、
ひとりポルトガルへ行き、一年余の滞在をした檀一雄は、「私の放浪
癖は、私の、自分で食べるものは自分でつくる流儀の生活をいっそう
助長したし、また反対に、自分で食べるものは自分で作る流儀の生
活が、私の放浪癖をことさらに助長した」と語っている。

旅の効用は、異文化に触れることである。不良の放浪は、(先進国
ではなく)アジア、アフリカ、中東、南米がいい。なぜなら、発展途上
の国々では「昔の自分」に出会えるからである。あるいは、「自分が
生まれる前の自分」に出会える。人間は、何をやって生きていったっ
ていい。そのことがヨーク分かる。日本という国が、いかに自縄自
縛された「特殊な国」であるかが分かる。・・・アジアや中東に行け
ばそこら中に不良がいる。現代の日本人が忘れてしまった不良だ
らけだ。それも原種不良ともいうべき純不良である。

(浜松の北にある史跡「石仏畑」)風外仙人(穴風外)を埋めた場所
・・・禅宗の坊主は死に比べの芸合戦で・・・相模の成願寺~小田
原山中洞穴~真鶴の天神堂近くの洞窟(小田原藩主、稲葉正則)
~浜名湖北で、八十二歳、畑の隅に穴を掘って、そこで座禅した
死んだ。
・・・カッパドキアなら、みんなやっていることだが、真鶴だから珍しい。・・・高齢化社会にいちだんとなると、死に方のパフォーマンス
は、不良のテーマとなる。

西行の辞世の歌は、「願はくは花のしたにて春死なむそのきさらぎ
の望月のころ」と思われているが・・・この歌は、死ぬ半年ほど前に
詠まれたもので、西行は「きさらぎの望月のころ」(釈尊が涅槃に入っ
た二月十五日の夜)に死んでみせると、この歌で予言した。
・・・歌で予言した通りピタリと二月十五日夜に死んだ。それで定家は
驚愕し、後鳥羽院も感動して、西行の名はいっそう広まった。美事に
死んでみせるというのが不良の心意気である。それも年を取ってから
スパッとやる。

一休の愛欲生活:

一休は、だれはばからず酒肉を食らい、女色にふけった。一休こ
そ大物不良の先駆者である。やっていることは破戒僧だが、その
くせ誰からも愛された。一休は七十七歳のとき、盲女の森という女
性(四十歳位)と愛欲生活をおくり、森女のヴァギナは「水仙の香り
がする」と書いた。・・・『狂雲集』

木喰は、六十余州を廻って九十三歳まで生きた。旅に出たのは
五十六歳である。旅行する費用を捻り出すために、万人講をつくっ
て喜捨をあおぎ、十五両という大金を集めた。現実的でしたたか
・・・寺にいても雑務係で、僧侶として出世する見込みはない。そこ
で、エエイとばかり旅に出たのは、木喰の大勝負だった。恐山~北
海道西海岸~(37年間)・・・「木喰はいづくの果ての行きだおれ犬
か鳥のえじきになりにけり」

女の不良は流浪せず、町の暗がりに罠を張って待ち伏せた。女は
町に棲みつく魔物である。男は町をたらしこむ妖怪である。女をた
らしこむように町をたらしこむ。妖怪と魔物はくんずほぐれつ一体と
なって時の流れへ身をゆだねて行く。どっちも時間には敗れる。老
いには勝てない。どうころんだって、かまやしない。行き着く果てに
行き着くだけだ。・・・自分の死を見定めれば、恐いものはなくなる。

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