「健康神話」を棄てよ(塩野七生vs.新見正則)2020/01/02 14:38

from 『文藝春秋 2020年1月号』

(新)やはり、気力が充実している方が病気になり難い。
   あまり面倒なことを考えずに、元気になれることをすれば
   いい。
(塩)自分が健康かそうでないかは、どういう基準で判断すれ
   ばよいのでしょう。
(新)直感でいいと思います。美味しく食べられて、眠れて、お
   通じが出て、「今日も健康だ」と思えれば、それで健康な
   んです。・・・データや数値ではなく、あくまで自分の感覚を
   信じたほうが良い。
(塩)健康診断とか人間ドックはやはり受けるべき?
(新)受けなくていいと思います。病院は調子が悪い時に行け
   ばいいだけの話です。調子が良い時は行かないほうが
   いい。余計な検査や治療をされるから。
   ある意味、病院も産業なので、顧客になってしまうといい
   ことない。必要でない薬を飲まされている人がたくさんい
   ます。ですから、医者に「絶対必要」「ちょっと必要」「必要
   でない」と分けてもらい、「絶対」以外は飲まなければいい。
   
(新)僕は結構、死の話もします。「あなたのいろんな訴えも、
   死んだら治るよ」と。・・・
   母は、「食べられなくなったらお迎えだ」という話を以前
   からしていたんです。ただ、何も食べなくなっても三ヶ月
   ほど生きました。とても嬉しかったのは、母が細くなって、
   臭いもなく、最期は菩薩さんのような顔で旅立ったこと
   です。点滴をすると臭いがするんです。重くなって、床ず
   れもできる。そういうのが一切なく、本当に綺麗に亡く
   なりました。・・・
   (癌などを患っている人には)「遺言状を書いたら」と勧め
  ています。そうすることで、自分の死と向き合えますし、
  他人に言いたいことも言える。
  治療について悩んだ場合に簡単なことは、医者に「あなた
  なら、どうしますか?」と尋ねることです。
  母と同じような人がいれば、「自分だったら、自分のはは
  だったら、点滴も胃瘻もしません」と言います。ところが、
  患者さんの家族の多くは、「何でもしてくれ」といってしま
  うんですね。すると、不幸なことになります。意識もないの
  に長生きして、ブクブクになってしまう。
(塩)なんだかストア派の哲学者の死みたいですね。ダメだ
  と自覚したとき、食を絶って死ぬ方を選びました。
(新)自分で死を迎えたんですね。するとボケることもありま
  せん。・・・
  今の日本では「迷惑をかけてはいけない」という風潮が強
  すぎます。迷惑をかけるのは「お互い様」と思って許してあ
  げればいい。煙草も僕は嫌いだけど、あの人は吸いたい
  のだろうと。僕もあの人に迷惑をかけているから許してあげ
  ようといった気持ちがなくなっている。悪いと分かっている
  ものをイジメ過ぎ。皆の心が何だかギスギスしている気が
  します。・・・リスクがあっても、ワクワク、ドキドキがなけれ
  ば、面白くないのに。ギスギスが一番健康に悪いんです。

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