民主主義の土台を崩す高等教育2020/01/05 15:43

from 「私たちはどこに行くのか」(E. トッド) 
     in 『世界の未来』

フランスは共和主義的エリートの国。試験による選抜制度が
確立し、権力の座に付く人たちは、グランド・ぜコールで学ん
でいる。しかし、その最高峰と見られるENA(国立行政院)を
出た人たちがたいへん知的だというわけでもない。

そんな人たちが指導しているフランスが、経済的にも政治的
にも失敗し、より強い隣国に従属する状態にある。あのENA
を卒業し、高等教育システムが生み出す人たちの中でも更に
その上澄み部分にいるような人たちに統治されているにも
拘わらずにだ。むしろ、企業や組織の中間管理職や現場監
督や病院での看護職といった人たちの方が、マクロン大統
領よりもっと知的だと言えると思う。

もう一つ議論すべきことは、高等教育というのは、体制順応
のための制度として優れていること。何かが上手く行かなく
て、この高等教育というものが役に立たなくなっている。・・・
ひょっとしたら、このシステムは知的レベルの高い人の中で
一番創造性のない人物を選抜するための仕組みではない
かとさえ考えてしまう。

マクロン大統領は、知識人にバカにされるのではなく、自分
の方から知識人をバカにしているようだ。これまで大統領は
自分が知識人より優れているとは言わなかったものだ。
たとえば、私がシラク氏やサルコジ氏、オランド氏を愚かだ、
などと言ったとしても問題はなかった。実際は、シラク氏に
しても頭は良かった。回転は速かったし、緻密だった。サル
コジ氏も巧みだった。
マクロン氏については、あまりオリジナリティーがあるとは
言えないと思うし、彼の口から新しい考え方を聞いたことは
ない。私がそのように言うと、聞いていたジャーナリスト達
は、私がとんでもなく忌まわしいことを言ったかのように私
を見る。彼らの頭の中では、マクロン氏はおそろしく知的で
あるらしい。まるで、かつてスターリンのことをおそろしく知
的だと思い込んでいた共産党員のように。
マクロン氏は知識人ではない。ただの優等生。体制順応で、
しかも点取り虫。




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