「量子力学の本心」 ― 2024/03/01 09:46
from 「今日のミトロジー」中沢新一(週刊『現代』連載中)
>2022年ノーベル物理学賞は、アスペ博士らの「量子もつ
れ(Entanglement)」の研究に贈られた。・・・
(この研究の真骨頂は)物理学の根幹にかかわる、重大
な問題に焦点を合わせている。・・・
量子もつれに、人間の意識が介入すると事態は一変(※)
してしまう。
※ 量子力学はミクロのレベルでは、あらゆる物質がお互
いに作用を及ぼしながらつながっていて、全体運動を
行なっていると考えている。そのために初め近くにい
て影響を及ぼしあっていた二つの物質を、無限に遠く
まで引き離したとしても、一方に変化が起こると、その
情報は即座に無限に遠くにいる物質に伝わっていき、
もう一方にも変化を引き起こしていくことになる。
>意識が介入する以前には、全宇宙はお互いつながりあ
いながら運動しているので、局所での「状態」というもの
は、決まっていない。しかし意識は物事を「分別」しようと
する本性を持っているので、状態がないところにも状態を
見つけようとする。その結果、実験で一つの状態が決め
られると、もともとそこにあった筈の全体運動は途端に
消えて見えなくなってしまう。・・・
人間はこの分別する知性(常識形成)を発達させたおか
げで、宇宙の本当の姿が見えなくなっている。そうして
本当でない宇宙の姿を「ほんもの」と妄想して、自分たち
の世界をつくっている。
>ところが、心が分別の働きを一瞬でも止めることがで
きると、そこにはまったく違う「無分別」の世界があらわ
れてくる。そこではあらゆる事物は互いに関係し合って、
孤立しているものはなく、宇宙の一部に起こった出来事
の情報は、瞬く間に全体に波及していく。
>2022年ノーベル物理学賞は、アスペ博士らの「量子もつ
れ(Entanglement)」の研究に贈られた。・・・
(この研究の真骨頂は)物理学の根幹にかかわる、重大
な問題に焦点を合わせている。・・・
量子もつれに、人間の意識が介入すると事態は一変(※)
してしまう。
※ 量子力学はミクロのレベルでは、あらゆる物質がお互
いに作用を及ぼしながらつながっていて、全体運動を
行なっていると考えている。そのために初め近くにい
て影響を及ぼしあっていた二つの物質を、無限に遠く
まで引き離したとしても、一方に変化が起こると、その
情報は即座に無限に遠くにいる物質に伝わっていき、
もう一方にも変化を引き起こしていくことになる。
>意識が介入する以前には、全宇宙はお互いつながりあ
いながら運動しているので、局所での「状態」というもの
は、決まっていない。しかし意識は物事を「分別」しようと
する本性を持っているので、状態がないところにも状態を
見つけようとする。その結果、実験で一つの状態が決め
られると、もともとそこにあった筈の全体運動は途端に
消えて見えなくなってしまう。・・・
人間はこの分別する知性(常識形成)を発達させたおか
げで、宇宙の本当の姿が見えなくなっている。そうして
本当でない宇宙の姿を「ほんもの」と妄想して、自分たち
の世界をつくっている。
>ところが、心が分別の働きを一瞬でも止めることがで
きると、そこにはまったく違う「無分別」の世界があらわ
れてくる。そこではあらゆる事物は互いに関係し合って、
孤立しているものはなく、宇宙の一部に起こった出来事
の情報は、瞬く間に全体に波及していく。
サリヴァン先生は「w-a-t-e-r」と綴った ― 2023/12/31 07:00
「その朝、彼女(注、ヘレン・ケラー)が顔を洗っていた時・・・
私は w-a-t-e-r と綴りました。
・・・(その後ポンプ小屋で)ヘレンに私がポンプを押している間、
水の出口の下に、コップを持たせておきました。冷たい水が
どっと流れ出てコップを充たした時に、私はヘレンの、何も持っ
ていない方の手に、w-a-t-e-r と綴りました。手の上にかかって
くる冷たい水の感触に、密接に結びついてきた、この言葉は、
彼女を驚かしたようでした。彼女はコップを落とし、釘づけに
されたように立っていました。新しい光明が彼女の顔に現れて
きました。彼女は数回 w-a-t-e-r と綴りました。・・・彼女は代
わるべき言葉を用い始めるや否や、それまで使っていた合図
と身振りをやめました。そして新しい言葉を覚えることに、最も
生き生きしたよろこびを覚えるのです。そして、私たちは、彼女
の顔が毎日毎日と豊かな表情となるのに気づいているの
です。」 (カッシーラー『人間』岩波文庫、pp.79-81)
私は w-a-t-e-r と綴りました。
・・・(その後ポンプ小屋で)ヘレンに私がポンプを押している間、
水の出口の下に、コップを持たせておきました。冷たい水が
どっと流れ出てコップを充たした時に、私はヘレンの、何も持っ
ていない方の手に、w-a-t-e-r と綴りました。手の上にかかって
くる冷たい水の感触に、密接に結びついてきた、この言葉は、
彼女を驚かしたようでした。彼女はコップを落とし、釘づけに
されたように立っていました。新しい光明が彼女の顔に現れて
きました。彼女は数回 w-a-t-e-r と綴りました。・・・彼女は代
わるべき言葉を用い始めるや否や、それまで使っていた合図
と身振りをやめました。そして新しい言葉を覚えることに、最も
生き生きしたよろこびを覚えるのです。そして、私たちは、彼女
の顔が毎日毎日と豊かな表情となるのに気づいているの
です。」 (カッシーラー『人間』岩波文庫、pp.79-81)
老化は治療できるか#20 ― 2023/11/21 12:08
from 『文藝春秋』河合香織、2023年3~7月
>軽く息が切れる程度の運動
脳の老化を防ぎ、幸せな老後を過ごすための基本、
それは結局は”運動”である。加齢は止められない
ので、脳が萎縮することは仕方がない。けれども、
加齢を抑える生活習慣があることが分かってきて
いる。歳を取っても脳を健康に保つためには、動脈
硬化を如何に抑えるかが大事!また、鬱病も将来
の認知症リスクを高めることが分かっているので、
薬や生活習慣によって心身の状態をコントロール
する視点を持つように。その上で、軽く息が切れる
程度の運動を日々の生活の中で習慣化することだ。
>主観的幸福感
運動と頒かち難く関係しているのが、好奇心や学び
直しである。趣味や好奇心が脳の健康を保つため
に必要なのかの答えの一つが、「脳の可塑性」であ
る。脳には何歳からでも変化に対応する力が備わっ
ている。とりわけ「主体的・能動的に学ぶこと」である。
もう一つ、脳の老化予防にとって大事なのは「会話
によるコミュニケーション」である。
>脳に「手遅れ」はない
「不安や心配を感じる時、扁桃体が活性化している。
そのすぐ隣りにある海馬が、扁桃体の暴走を抑える
役割を果たしている。そして海馬は運動をすることで、
その機能が高まる。つまり、”運動は最強”と言える
のです」
人生百年時代に必要な視点は、マインド・セット!
cf. 『100歳の美しい脳』(デヴィッド・スノウドン)
(東北大スマート・エイジング学際重点研究センター)
「スマート・エイジングとは、たとえ高齢期になっても
人間として成長でき、より賢くなれること・・・高齢期
を”知的に成熟する人生の発展期”と捉えていること
が特徴です。今日、思い立ったら、その日から自分
のやりたかった新しいことを始めればいい。自分に
『壁』を作らないこと!それが結局は、脳を健康に保
ち幸せになる秘訣です」
※ 後悔が残るくらいがちょうどいい
春あわゆきのほかほか消える (東直子)
>軽く息が切れる程度の運動
脳の老化を防ぎ、幸せな老後を過ごすための基本、
それは結局は”運動”である。加齢は止められない
ので、脳が萎縮することは仕方がない。けれども、
加齢を抑える生活習慣があることが分かってきて
いる。歳を取っても脳を健康に保つためには、動脈
硬化を如何に抑えるかが大事!また、鬱病も将来
の認知症リスクを高めることが分かっているので、
薬や生活習慣によって心身の状態をコントロール
する視点を持つように。その上で、軽く息が切れる
程度の運動を日々の生活の中で習慣化することだ。
>主観的幸福感
運動と頒かち難く関係しているのが、好奇心や学び
直しである。趣味や好奇心が脳の健康を保つため
に必要なのかの答えの一つが、「脳の可塑性」であ
る。脳には何歳からでも変化に対応する力が備わっ
ている。とりわけ「主体的・能動的に学ぶこと」である。
もう一つ、脳の老化予防にとって大事なのは「会話
によるコミュニケーション」である。
>脳に「手遅れ」はない
「不安や心配を感じる時、扁桃体が活性化している。
そのすぐ隣りにある海馬が、扁桃体の暴走を抑える
役割を果たしている。そして海馬は運動をすることで、
その機能が高まる。つまり、”運動は最強”と言える
のです」
人生百年時代に必要な視点は、マインド・セット!
cf. 『100歳の美しい脳』(デヴィッド・スノウドン)
(東北大スマート・エイジング学際重点研究センター)
「スマート・エイジングとは、たとえ高齢期になっても
人間として成長でき、より賢くなれること・・・高齢期
を”知的に成熟する人生の発展期”と捉えていること
が特徴です。今日、思い立ったら、その日から自分
のやりたかった新しいことを始めればいい。自分に
『壁』を作らないこと!それが結局は、脳を健康に保
ち幸せになる秘訣です」
※ 後悔が残るくらいがちょうどいい
春あわゆきのほかほか消える (東直子)
老化は治療できるか#19 ― 2023/11/20 12:03
from 『文藝春秋』河合香織、2023年3~7月
>人によって違う体内時計リズム
村上春樹が、早寝早起きの生活を送り、日々の
ジョギングを欠かさず、野菜サラダを作るのが好
きで、書斎に籠もって毎日決まった時刻に仕事す
るような作家であること(『職業としての小説家』)
はよく知られている。
八木田和弘(時計遺伝子研究)によれば、個人差
「クロノタイプ」が存在し、「体内時計を制御すること
で老化コントロール?」には、サーカディアン・リズ
ムが光の影響によって調整される機能に着目し
ている。
「体内時計は朝の光によってリセットされる一方、
夜の光によって後ろにずらされます。光を調節し
て体内時計を整えることは、老化をコントロール
することに繋がります。特に午前中の明るい光
は乱れかけた体内時計を整えてくれます。日中
に光をしっかり浴びて夜間のメラトニンの分泌を
増やすこと。曇りの日(10,000ルクス)でも、照度
は十分に足りています。昼間の運動と夕方の
運動(代謝効率がよい)が効果的で、夜遅くの
運動は眠気を遠ざけます。そして朝食が大切で
す。蛋白質の多いメニューを摂るのが良いで
しょう」
「体内時計は地球上で進化したあらゆる生命に
共通した<秩序の源泉>だと言えます。もし
この体内時計、つまり時間を操作することができ
れば、老化を止めることも可能かもしれません」
※ 地球のリズムと生体リズムが合うと、心身共
に体調が良くなってきます!
>人によって違う体内時計リズム
村上春樹が、早寝早起きの生活を送り、日々の
ジョギングを欠かさず、野菜サラダを作るのが好
きで、書斎に籠もって毎日決まった時刻に仕事す
るような作家であること(『職業としての小説家』)
はよく知られている。
八木田和弘(時計遺伝子研究)によれば、個人差
「クロノタイプ」が存在し、「体内時計を制御すること
で老化コントロール?」には、サーカディアン・リズ
ムが光の影響によって調整される機能に着目し
ている。
「体内時計は朝の光によってリセットされる一方、
夜の光によって後ろにずらされます。光を調節し
て体内時計を整えることは、老化をコントロール
することに繋がります。特に午前中の明るい光
は乱れかけた体内時計を整えてくれます。日中
に光をしっかり浴びて夜間のメラトニンの分泌を
増やすこと。曇りの日(10,000ルクス)でも、照度
は十分に足りています。昼間の運動と夕方の
運動(代謝効率がよい)が効果的で、夜遅くの
運動は眠気を遠ざけます。そして朝食が大切で
す。蛋白質の多いメニューを摂るのが良いで
しょう」
「体内時計は地球上で進化したあらゆる生命に
共通した<秩序の源泉>だと言えます。もし
この体内時計、つまり時間を操作することができ
れば、老化を止めることも可能かもしれません」
※ 地球のリズムと生体リズムが合うと、心身共
に体調が良くなってきます!
老化は治療できるか#18 ― 2023/11/19 11:58
from 『文藝春秋』河合香織、2023年3~7月
>睡眠は最高のアンチエイジング
※ オレキシンの発見(1998年):
柳沢正夫(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)
日本人は「睡眠の質」を考える以前に、「量(6-8時
間)」が足りていない。私に言わせれば、それは
<覚醒>依存症のように見える。
「寝すぎそのものが問題なのではない。そもそも人は
必要以上に長く眠れません。長時間睡眠の人の寿命
が短いのは、それだけ眠れなければならない何らか
の身体の問題を抱えているからだと考えられます」
>レム睡眠の減少は認知症リスク
オレキシン拮抗薬が不眠症治療薬として発売されて
いる。それは髄液中のアミロイドβやリン酸化タウ蛋
白質を減らすという最新の研究・・・
(柳沢)「これは期待の持てる報告です。オレキシン
受容体拮抗薬には依存症がないため、眠れるように
なったら卒業できる利点もあります」
「加齢の影響を少なくする一番の近道は、睡眠時間
について考えることだと言えます。自分にとって必要
な睡眠を知り、そのペースを日常的に守ることです。
どれだけの睡眠時間が必要かは、遺伝子によって
異なります。人によって違うということです。<自分で
実験しながら必要な睡眠量を把握すること>になり
ます」
>明るすぎる日本の夜
分かっていることとしては、夜間の光は睡眠の質を
高める上での天敵だということだ。
>睡眠は最高のアンチエイジング
※ オレキシンの発見(1998年):
柳沢正夫(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)
日本人は「睡眠の質」を考える以前に、「量(6-8時
間)」が足りていない。私に言わせれば、それは
<覚醒>依存症のように見える。
「寝すぎそのものが問題なのではない。そもそも人は
必要以上に長く眠れません。長時間睡眠の人の寿命
が短いのは、それだけ眠れなければならない何らか
の身体の問題を抱えているからだと考えられます」
>レム睡眠の減少は認知症リスク
オレキシン拮抗薬が不眠症治療薬として発売されて
いる。それは髄液中のアミロイドβやリン酸化タウ蛋
白質を減らすという最新の研究・・・
(柳沢)「これは期待の持てる報告です。オレキシン
受容体拮抗薬には依存症がないため、眠れるように
なったら卒業できる利点もあります」
「加齢の影響を少なくする一番の近道は、睡眠時間
について考えることだと言えます。自分にとって必要
な睡眠を知り、そのペースを日常的に守ることです。
どれだけの睡眠時間が必要かは、遺伝子によって
異なります。人によって違うということです。<自分で
実験しながら必要な睡眠量を把握すること>になり
ます」
>明るすぎる日本の夜
分かっていることとしては、夜間の光は睡眠の質を
高める上での天敵だということだ。
老化は治療できるか#17 ― 2023/11/18 11:52
from 『文藝春秋』河合香織、2023年3~7月
>半導体に記憶をアップロードする
老化研究にとって脳が特別な存在なのは、代替
不可能な臓器であるからだ。しかし、この取り換え
は不可能という大前提を覆そうとする研究がある。
渡邉正峰がテーマとしているのは、脳の記憶や意
識をコンピュータ上にアップロードするというもので
ある。
「今、記憶について分かっているのは、海馬には記
憶がインデックスのように蓄えられているということ
です。つまり、ランダム脳の側頭葉を刺激すれば、
人は走馬灯のように記憶を蘇らせるわけです」
そこで、彼が提示する方法とは、神経細胞の入れ
換えではなく、土台となる「誰のものでもない」意識
を予め宿すマシンに人間の脳を接続し、新型の
BMI(brain machine interface)を介して記憶を転送
することで、最終的には「私」の意識を移し替えると
いうものだ。元の生体脳が死を迎えても、その人
は機械の中で生き続けることになる――。
>「意識」をコンピュータ上に再現
ここでポイントとなるのは、「意識」とは何かという
問題だ。
実際に”ネクトーム社”(MT発ベンチャー)は、死亡
した人の脳を取り出して、それをごく薄くスライスし
て、ニューロンがどのように結合しているかを読み
取っている。その情報をコンピュータ上に複製して
いくことで、亡くなった人の意識の移植を試みてい
る。
(渡邉)「これらの手法により、神経細胞間の配線
の有無を抽出することは出来ますが、配線の強度
を十分な精度で読み取ることはほぼ不可能です。
私の手法は、生きたまま脳の意識を移植する方法
で、先の手法から得られる神経配線の有無は、あ
くまで機械の配線の初期状態としてのみ用いる
ことになります」
脳を機械に繋いで日常生活を送ることで、機械の
意識を「私色」に染めていく方法を考えているのだ。
>不老不死は楽園なのか?
>半導体に記憶をアップロードする
老化研究にとって脳が特別な存在なのは、代替
不可能な臓器であるからだ。しかし、この取り換え
は不可能という大前提を覆そうとする研究がある。
渡邉正峰がテーマとしているのは、脳の記憶や意
識をコンピュータ上にアップロードするというもので
ある。
「今、記憶について分かっているのは、海馬には記
憶がインデックスのように蓄えられているということ
です。つまり、ランダム脳の側頭葉を刺激すれば、
人は走馬灯のように記憶を蘇らせるわけです」
そこで、彼が提示する方法とは、神経細胞の入れ
換えではなく、土台となる「誰のものでもない」意識
を予め宿すマシンに人間の脳を接続し、新型の
BMI(brain machine interface)を介して記憶を転送
することで、最終的には「私」の意識を移し替えると
いうものだ。元の生体脳が死を迎えても、その人
は機械の中で生き続けることになる――。
>「意識」をコンピュータ上に再現
ここでポイントとなるのは、「意識」とは何かという
問題だ。
実際に”ネクトーム社”(MT発ベンチャー)は、死亡
した人の脳を取り出して、それをごく薄くスライスし
て、ニューロンがどのように結合しているかを読み
取っている。その情報をコンピュータ上に複製して
いくことで、亡くなった人の意識の移植を試みてい
る。
(渡邉)「これらの手法により、神経細胞間の配線
の有無を抽出することは出来ますが、配線の強度
を十分な精度で読み取ることはほぼ不可能です。
私の手法は、生きたまま脳の意識を移植する方法
で、先の手法から得られる神経配線の有無は、あ
くまで機械の配線の初期状態としてのみ用いる
ことになります」
脳を機械に繋いで日常生活を送ることで、機械の
意識を「私色」に染めていく方法を考えているのだ。
>不老不死は楽園なのか?
老化は治療できるか#16 ― 2023/11/17 11:48
from 『文藝春秋』河合香織、2023年3~7月
>デュアルタスクと睡眠の重要化
※ デュアルタスクは、有酸素運動をしながら
「頭を働かせる」というもの
睡眠が認知機能にどのように関係しているのか、
そのメカニズムは未だ分かっていない。一つの仮
説として考えられるのは、グリア細胞の果たして
いる役割だ。
※ グリア細胞は、脳の1/2~2/3を占める非神経
細胞で、増えたり減ったりする
脳内で、原因となるアミロイドβやタウといった蛋白
質の代謝を行なっているのがミクロ・グリア細胞で、
起きているときに比べて寝ている時にその機能が高
まる。ちなみに、脳の免疫機能に関する研究は最近
急速に進んでいる。そうした脳の免疫機能と体の
免疫機能には、思った以上の関係性がありそうで、
「脳腸相関」という考え方がその一つだ。
>脳細胞が死んでも記憶は死なない
>デュアルタスクと睡眠の重要化
※ デュアルタスクは、有酸素運動をしながら
「頭を働かせる」というもの
睡眠が認知機能にどのように関係しているのか、
そのメカニズムは未だ分かっていない。一つの仮
説として考えられるのは、グリア細胞の果たして
いる役割だ。
※ グリア細胞は、脳の1/2~2/3を占める非神経
細胞で、増えたり減ったりする
脳内で、原因となるアミロイドβやタウといった蛋白
質の代謝を行なっているのがミクロ・グリア細胞で、
起きているときに比べて寝ている時にその機能が高
まる。ちなみに、脳の免疫機能に関する研究は最近
急速に進んでいる。そうした脳の免疫機能と体の
免疫機能には、思った以上の関係性がありそうで、
「脳腸相関」という考え方がその一つだ。
>脳細胞が死んでも記憶は死なない
老化は治療できるか#15 ― 2023/11/16 11:40
from 『文藝春秋』河合香織、2023年3~7月
>細胞を初期化する技術
エピジェネティックスはDNAメチル化とヒストン修飾
によって制御されているが、そのうちDNAメチル化
の量を特定の遺伝子で刺激すると、ほぼ実際の生
物学年齢(エピジェネティック時計)と一致した。この
時計をゼロ歳に戻す方法が存在すると岡野栄之は
言う。
「(山中四因子と呼ばれる)四種類の遺伝子を導入
すると、エピジェネティック時計はどんどん若返り、受
精後数日の状態(細胞の初期化)になった。それを
臨床の現場でどのように応用できるかは、今後の
課題です」
すべての細胞に四因子を導入すると、全部が初期化
されてしまい、生きることが出来ない。これを限定的に
使い、細胞を若返らせることを「細胞リプログラミング」
と呼び研究が進められている。ここで重要なのは、
「モノの老化と細胞の老化」はまったく違うということだ。
では、細胞が初期化されるのであれば、脳の神経
細胞自体を増やすことは出来るのだろうか。
(加瀬義彦)「神経細胞を人工的に新しく増やそうと
すると、やり方では記憶を失ってしまう。新しく作ら
れた回路が元にあった回路を侵食してしまうから。
記憶の直線性を失わせてしまう可能性もあります」
>アミロイドβの増加を抑える
レカネマブ(アミロイドβの蓄積を減少させる認知症
治療薬)がFDAの承認を受けた。
>光認知療法の衝撃
光認知療法の利点は、薬効を脳だけに絞れること・・・
ここで留意しておきたいことは、レカネマブも光認知
療法も脳に溜まった蛋白質を取り除くことは出来て
も、やはり既に失われた神経細胞を増やせるわけ
ではないということだ。
>脳の「ゴミ」はS字カーブで増える
今、認知症の治療ではMCI(mild cognitive impairment:
軽度認知障害者)を、認知症が発症する前に発見し、
積極的にレカネマブなどを投与していこうという流れ
がある。富田泰輔は、アミロイドβが蓄積し始めるか
どうかを血液検査で調べるバイオマーカーの手法を
開発し、MCIの更に前段階で「認知症予備軍」の人を
見つけることを目指している。
(富田)「脳に溜まるゴミもシグモイド(S字曲線)的に
増えることが分かっています。つまり、最初はチョッと
ずつしかふえないのですが、増え始めると一気に
増えて、その後はフラットになります。蛋白質が溜ま
る前の兆候を明らかに出来れば、認知機能が正常
な段階から積極的に治療を始めることが可能になる
筈です」
>細胞を初期化する技術
エピジェネティックスはDNAメチル化とヒストン修飾
によって制御されているが、そのうちDNAメチル化
の量を特定の遺伝子で刺激すると、ほぼ実際の生
物学年齢(エピジェネティック時計)と一致した。この
時計をゼロ歳に戻す方法が存在すると岡野栄之は
言う。
「(山中四因子と呼ばれる)四種類の遺伝子を導入
すると、エピジェネティック時計はどんどん若返り、受
精後数日の状態(細胞の初期化)になった。それを
臨床の現場でどのように応用できるかは、今後の
課題です」
すべての細胞に四因子を導入すると、全部が初期化
されてしまい、生きることが出来ない。これを限定的に
使い、細胞を若返らせることを「細胞リプログラミング」
と呼び研究が進められている。ここで重要なのは、
「モノの老化と細胞の老化」はまったく違うということだ。
では、細胞が初期化されるのであれば、脳の神経
細胞自体を増やすことは出来るのだろうか。
(加瀬義彦)「神経細胞を人工的に新しく増やそうと
すると、やり方では記憶を失ってしまう。新しく作ら
れた回路が元にあった回路を侵食してしまうから。
記憶の直線性を失わせてしまう可能性もあります」
>アミロイドβの増加を抑える
レカネマブ(アミロイドβの蓄積を減少させる認知症
治療薬)がFDAの承認を受けた。
>光認知療法の衝撃
光認知療法の利点は、薬効を脳だけに絞れること・・・
ここで留意しておきたいことは、レカネマブも光認知
療法も脳に溜まった蛋白質を取り除くことは出来て
も、やはり既に失われた神経細胞を増やせるわけ
ではないということだ。
>脳の「ゴミ」はS字カーブで増える
今、認知症の治療ではMCI(mild cognitive impairment:
軽度認知障害者)を、認知症が発症する前に発見し、
積極的にレカネマブなどを投与していこうという流れ
がある。富田泰輔は、アミロイドβが蓄積し始めるか
どうかを血液検査で調べるバイオマーカーの手法を
開発し、MCIの更に前段階で「認知症予備軍」の人を
見つけることを目指している。
(富田)「脳に溜まるゴミもシグモイド(S字曲線)的に
増えることが分かっています。つまり、最初はチョッと
ずつしかふえないのですが、増え始めると一気に
増えて、その後はフラットになります。蛋白質が溜ま
る前の兆候を明らかに出来れば、認知機能が正常
な段階から積極的に治療を始めることが可能になる
筈です」
老化は治療できるか#14 ― 2023/11/15 11:33
from 『文藝春秋』河合香織、2023年3~7月
>スーパーセンチナリアン(超110歳)の謎
141人/2020年(1人/90万人)
(慶應大医学部)百寿総合研究センターWeb.siteから、
「何がスーパーかというと、単に寿命が長いという
ことだけではなく、多くのスーパー・センチナリアンは
百歳時点でも自立した生活を営まれており、健康寿
命が百歳を超えて・・・」
「スーパー・センチナリアンは脳の状態と関連した
エピジェネティックスが百歳を超えても若い状態に
保たれていることが分かっています」
「スーパー・センチナリアンたちには、アポリボ蛋白質
E4(APOE4)という遺伝子のタイプが極めて少ないこと
が分かりました。これはアルツハイマー型認知症を引
き起こすリスクが最も高い遺伝子です。よって、認知
症のリスク因子が少ない人は、より長寿になりやすい
と・・・」
同センターの調査によると、認知機能が高く保た
れているだけでなく、また血管機能も強く保たれてお
り・・・
>スーパーセンチナリアン(超110歳)の謎
141人/2020年(1人/90万人)
(慶應大医学部)百寿総合研究センターWeb.siteから、
「何がスーパーかというと、単に寿命が長いという
ことだけではなく、多くのスーパー・センチナリアンは
百歳時点でも自立した生活を営まれており、健康寿
命が百歳を超えて・・・」
「スーパー・センチナリアンは脳の状態と関連した
エピジェネティックスが百歳を超えても若い状態に
保たれていることが分かっています」
「スーパー・センチナリアンたちには、アポリボ蛋白質
E4(APOE4)という遺伝子のタイプが極めて少ないこと
が分かりました。これはアルツハイマー型認知症を引
き起こすリスクが最も高い遺伝子です。よって、認知
症のリスク因子が少ない人は、より長寿になりやすい
と・・・」
同センターの調査によると、認知機能が高く保た
れているだけでなく、また血管機能も強く保たれてお
り・・・
老化は治療できるか#13 ― 2023/11/14 11:24
from 『文藝春秋』河合香織、2023年3~7月
>老化を可視化する
老化をビジュアル化して指標やリスク・スコアを作
ろうという研究を進めるのが南野徹である。彼は
老化の原因となる老化細胞除去の研究・・・
「今、対象にしているのは病的な老化、分かりや
すく言うと健康寿命を短くするような老人化を治療
できないか、というコンセプトで研究を進めています。
・・・老化の制御が可能かというと、少なからず制御
は可能ではないかと思っています」
開発したいのは、”アンチエイジング・ワクチン”で
あるが、未だ臨床応用はされていない。老化を治療
するためには、老化の存在を可視化しないと先に進
まない。しかし、今のところ老化細胞が溜まっている
かどうかを可視化する方法はない。
(南野)「老化に関しても、癌のTNM分類のような
リスクの層別化が必要で、大規模調査でDB化された
血液やMRIなどのデータを幾つか組み合わて、老化
の進み具合を可視化できれば・・・そこから予後であ
る『3年後生存率』を出せれば・・・」
老化によって人は生命を落とす。その前に老化を
病気として認識し、治療や予防することを目指した
い。
>同じ車に百年は乗れない
老化の指標やリスク・スコアを作るにしても、その
優先順位が難しい。脳の問題は老化を考える上で、
最重要の問題であろう。
(今井)「視床下部が、老化と寿命の制御に非常に
重要な役割を果たしている。そこが体の他の臓器と
コミュニケーションを取ることによって、抗老化に働く
ように体のバランスを取っています。ですから視床
下部の特定の機能を高めてやったりすると、寿命が
伸びる。他の臓器の機能をどれほど高めても、その
老化のコントロールセンターをどうにかしないと限
界が来てしまう」
サーチュインの機能を活性化させる方向に司令を
出すのも視床下部だ。脂肪組織と骨格筋と視床
下部との間では、相互にコミュニケーションがあり、
制御されている。
(今井)「もしiPS技術が進んで、臓器などのパーツ
が取り換えられるようになったとします。そうする
と120歳よりもう少し寿命は延びると思います。で
も、どんなに取り換え可能な臓器を代えても、それ
らをコントロールする中枢部の神経細胞が新しく
ならないと、最終的には駄目になるでしょう。
将来、更に科学技術が発達して、脳の中枢の神経
細胞の機能を高めたり、新しいものに入れ替えたり
出来るようになったら、もっと寿命は延びるでしょう
ね。50年か100年先の話だと思います。だけど、
それ以前に人生百歳まで元気に寝たきりにならず、
120歳くらいまでには死ぬという社会は、10~20年
後には来ると思います」
とはいえ、気になることがある。視床下部の神経
細胞を、もし取り替えたら、そのまま同じ自分とい
えるのだろうか。
(今井)「視床下部は情動もコントロールしますか
ら、取り換えた時にその人の情動がそのままかは
保証の限りではありません。別人格になってしまう
こともあるかもしれません」
脳の老化を食い止め、同じ人間として連続性を保
つためにはどうすればいいのか。
>老化を可視化する
老化をビジュアル化して指標やリスク・スコアを作
ろうという研究を進めるのが南野徹である。彼は
老化の原因となる老化細胞除去の研究・・・
「今、対象にしているのは病的な老化、分かりや
すく言うと健康寿命を短くするような老人化を治療
できないか、というコンセプトで研究を進めています。
・・・老化の制御が可能かというと、少なからず制御
は可能ではないかと思っています」
開発したいのは、”アンチエイジング・ワクチン”で
あるが、未だ臨床応用はされていない。老化を治療
するためには、老化の存在を可視化しないと先に進
まない。しかし、今のところ老化細胞が溜まっている
かどうかを可視化する方法はない。
(南野)「老化に関しても、癌のTNM分類のような
リスクの層別化が必要で、大規模調査でDB化された
血液やMRIなどのデータを幾つか組み合わて、老化
の進み具合を可視化できれば・・・そこから予後であ
る『3年後生存率』を出せれば・・・」
老化によって人は生命を落とす。その前に老化を
病気として認識し、治療や予防することを目指した
い。
>同じ車に百年は乗れない
老化の指標やリスク・スコアを作るにしても、その
優先順位が難しい。脳の問題は老化を考える上で、
最重要の問題であろう。
(今井)「視床下部が、老化と寿命の制御に非常に
重要な役割を果たしている。そこが体の他の臓器と
コミュニケーションを取ることによって、抗老化に働く
ように体のバランスを取っています。ですから視床
下部の特定の機能を高めてやったりすると、寿命が
伸びる。他の臓器の機能をどれほど高めても、その
老化のコントロールセンターをどうにかしないと限
界が来てしまう」
サーチュインの機能を活性化させる方向に司令を
出すのも視床下部だ。脂肪組織と骨格筋と視床
下部との間では、相互にコミュニケーションがあり、
制御されている。
(今井)「もしiPS技術が進んで、臓器などのパーツ
が取り換えられるようになったとします。そうする
と120歳よりもう少し寿命は延びると思います。で
も、どんなに取り換え可能な臓器を代えても、それ
らをコントロールする中枢部の神経細胞が新しく
ならないと、最終的には駄目になるでしょう。
将来、更に科学技術が発達して、脳の中枢の神経
細胞の機能を高めたり、新しいものに入れ替えたり
出来るようになったら、もっと寿命は延びるでしょう
ね。50年か100年先の話だと思います。だけど、
それ以前に人生百歳まで元気に寝たきりにならず、
120歳くらいまでには死ぬという社会は、10~20年
後には来ると思います」
とはいえ、気になることがある。視床下部の神経
細胞を、もし取り替えたら、そのまま同じ自分とい
えるのだろうか。
(今井)「視床下部は情動もコントロールしますか
ら、取り換えた時にその人の情動がそのままかは
保証の限りではありません。別人格になってしまう
こともあるかもしれません」
脳の老化を食い止め、同じ人間として連続性を保
つためにはどうすればいいのか。
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