『アナトリア発掘記』1997/01/22 07:58

大村 幸弘『アナトリア発掘記』(NHKブックス)

『鉄を生みだした帝国』で、ヒッタイトの鉄を追い求めた
著者の、その後の20年を綴ったもの。

完璧なアプローチとはならなかった忸怩たる思い、それを
解決するために是非とも必要な「自前の遺跡」。
ある種の僥倖により、発掘権を”カマン・カレホユック”
遺跡において獲得したこと。そして、20年間掘り続けた
報告。

製鉄遺跡をひたすら探しつづけた著者は、今度は一つの遺
跡を根気よく掘り続け、歴史の重なりを一枚、一枚剥がして
行きます。目的を持つことなく、文化層の一枚、一枚の記録
の完全性をめざして。それは、カマン・カレホユックの文化編
年を構築するという考古学本来の使命を果たすためです。

そして、この遺跡でも製鉄遺物を発見し、製鉄は何ヶ所かで
行われたのであろう、と前著の主張が一部変更されました。
しかし、相変わらず、製鉄用の「炉」は発見されません。

この遺跡での最大の発見、と私が感ずるものは、所謂「暗黒
時代」(前1200年頃~前800年頃の古代ギリシャ文化の停
滞)の文化層が出土したことです。この時代のヒッタイト
の地にやって来たのは何者でしょうか?これも一筋縄では
行きません。「手づくね土器」を携えてブルガリア方面か
らやって来た民族なのか、あるいは「曲線文様土器」をキ
プロス方面から持ち込んだ民族なのか?
容易に判定できる事柄ではありませんが、とにかく「暗黒
時代」に一筋の光が射したのです。

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