サイコロジカル・コーピング・スキル2017/01/14 14:28

from 『リハビリテーション』上田敏著

 ※ コーピング・スキルというのは、病気や障害のあることを認
   めて、それとうまくやっていく技能の意味で、同時に、心の上
   でも、心理学的なコーピング・スキルを発展させることが非常
   に大事で、価値観の転換もこれの一例である。大きなマイナ
   スを被った時に、如何にその中からプラスの要素を見つけ出
   し、全体をプラスに転化させるかという心理的な技能である。


>心の立ち直り

 障害を持つと多くの患者さんが自尊心を失ってしまう。
 それは何故なのだろうか?

~結局は、私達の社会に広く行き渡っている価値観に問題がある
 のだろう。殆どの人は無意識の内に現代の日本社会に支配的な
 価値観に影響されて、障害を持つことは価値が低いと思っており、
 たとえ差別的な行動をとらないとしても、心の内には障害者は差
 別されても仕方がないという一種の偏見を持っていたのである。
 ところが、自分が障害を持つ身になると、突然、「差別される側」
 になってしまったことに気付くのである。

~しかし、障害というものは、その人の全体の中のごく一部に過ぎ
 ない。その人自身の存在価値は、全く損なわれていない。それな
 のに、障害によって失ったものにだけ目を向けてしまうのは偏っ
 た価値観に支配されているからである。

~そのような状態から立ち直るということは、結局、価値観を転換
 するということが基本になる。これまでの人生観そのものを根本
 から変えるわけであるから、これが実は、一番難しいことかもし
 れなない。

~身体的能力と知能、収入という社会に支配的な物差しで人間を
 見るというのは、一人ひとりの人間を様々な価値を持つ存在と
 見ないで、ひどく単純化して表面だけを見ることと同じである。
 ということは、自分をも単純化して表面しか見ていなかったこと
 になる。
 自分をもっと多面的・総合的に見ることができれば、自分の価値
 も決して全部が損なわれたわけではないことに気が付く。それは
 同時に、他人に対しても、そのような多元的な見方ができる価値
 観に転換することでもある。

◎本来持っているプラスの面に着目して、本人も気が付いていな
 い隠れたプラスの面を見つけ出し、それを引き出して発展させ
 る。それが、生きる技術としてのコーピング・スキルであり、
 生き抜く力としてのサイコロジカル・コーピング・スキルである。
 うまくいけば、病気になる前よりもむしろいい状態になることも
 夢ではないのである。

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