榊原智子氏 講演会2010/03/05 20:29

 「漂流する日本型福祉」
 ---新しい貧困・社会的排除とのつながりの再構築


1 日本型福祉というお約束

  戦後の「低負担高福祉」政策を支えていた要因は、
  豊富なな若年労働力、皆結婚・少離婚、少ない高
  齢者であった。それらに加えて、家族や企業がしっ
  かりしていたことなどが相俟って、低負担での高福
  祉を実現していた。

  ところが、この戦後日本のお約束が壊れた。

2 派遣村が伝えたメッセージ

  派遣村の村民には、頼れる家族も企業も、もはや
  存在しない。派遣労働は失業即ち生活基盤の喪失
  であり、なかでも30、40代の男性は家族からも遊離
  してしまうことが、派遣村において特徴的であった。

  このような綻びが社会の随所で見られるようになっ
  て来ている。貧困家庭の高校中退。息子による老
  親の介護。無差別殺人等。家族、学校、企業からの
  疎外を一因とする事件にほかならないであろう。

3 日本型安心ネットの綻び

  核家族の膨張(東京では9割)は止まらず、離婚、失
  業、非正規化労働が増加する中で、日本型安心ネット
  は消えかかり、新たな福祉システムの構築が必要と
  なっている。既に未知の事態に突入しているのである。

4 子ども福祉に顕著な機能不全

  このような異常事態の顕れとして人口減少時代を捉
  えなければならない。少子化と高齢化の未来は、
  子どもを育てる文化の消失と同時に仲間の消滅でも
  ある。
  
  そこで少子化を止めるには、多産国フランスに学び、
  有効な少子化対策を実施することが急務となる。

5 新しい社会連帯の構築へ

  「低負担高福祉」が破綻しつつある以上、今後は、
  「中負担中福祉」を指向せざるを得ないのである。