「自然のいとなみ」(塔和子)2021/01/02 10:26


 あんずの実がなっている
 若葉がそよいでいる
 幹の幹
 根の根をたどってみた見たとしても
 いったいどんな力でどんな知恵で
 あんずの木があんずで在りつづけ
 何の変異もおこさず
 花咲き実をならせ葉をよそがせ
 また
 その葉を落とし裸木になり
 同じことを年々くり返させているのか
 知ることはできない
 人も魚も
 力や知恵の参与しないところで
 子を産み
 人は人になり
 魚は魚になってゆく
 道端のいぬふぐりの花さえ
 こう咲くように咲かされて
 咲いている
 私はいまこのとき
 こもごもの生命と共に
 私であるより外にない私で在らされて立ち
 見渡せば
 ものみな
 己れであらされている
 己れを
 誇らしげにかざしている