回避性パーソナリティ障害#22021/01/26 07:40


>絆を支え、生存を守る仕組み

 我々は他の人と親しくなり、友達になったり、恋
 人同士になったり、一緒に家族を築いたり、子ど
 もを育てたりする。社会が社会として成り立って
 いるのは、そうした人との結びつき(絆)がある
 ゆえだ。
 
 この絆という現象は、単に心理学的なものではな
 くて、実は、生物学的な仕組みによって支えられ
 ている。その仕組の正体が愛着(Attachment)で
 ある。
 愛着はオキシトシンに司られる仕組みなので、哺
 乳類全般に共有されている。我々が親しみを感じ
 ているだけではなく、相手も同じ様に感じている。
 そうした相互性が愛着という仕組みの面白さであ
 る。

 愛着という仕組みは遺伝子レベルで組み込まれ
 ているわけだが、実は、遺伝子を持っているだけ
 では、この仕組みは上手く働かない。上手く働く
 ようになるためには、スイッチ・オンの作業が必要
 だ。乳児期に母親から母乳を与えられ、愛情深く
 撫でられたり、世話をされたりすることで
 スイッチ・オンし、活性化される。

 そのプロセスを怠ってしまうと、いくら正常の遺伝子
 を持っていても、その仕組みは上手く働かなくなる。
 しかも、スイッチを入れることができるのは授乳期で
 ある幼い期間に限られていて、臨界期と呼ばれる。
 肝心な時にしっかりと世話をすることが非常に重要
 になる。

 幸運な子どもは親からしっかり世話をしてもらい、そ
 の親に対する特別な絆である安定した愛着を育む
 ことができる。ここで注目すべきは、愛着の仕組み
 が単なる絆の問題にとどまらないということだ。そ
 れは、子どもの健康や発達を守る上でも不可欠な
 役割をしている。オキシトシンにはストレスや不安
 から守る作用があり、また社会性や共感性を高め
 る作用があるからだ。
 幼い頃に、オキシトシンがたっぷりと働く環境で育
 つことで、子どもは揺るぎない安心感を手に入れ、
 人と上手くやっていくための社会性や共感性を育
 むこともできるのである。
 不幸にして、ろくに愛されもせず、放って置かれて
 育つと、病気に罹りやすかったり、不安の強い子
 どもになってしまう。