ドストエフスキーと妻アンナ#22021/01/23 06:43


>絶体絶命の中で現れた女性(アンナ)
 アンナはドストエフスキーの読者でもあったが、彼に
 対する最初の印象はそれほどよいものではなかった。
 だが、彼が大変なピンチにあり、助けを必要としてい
 ることだけはよく理解できた。
 ドストエフスキーが素直に実情を打ち明けたからだ。
 それから二人の共同作業が始まる。・・・『賭博者』を
 完成させたのだ。
 二十歳以上の歳の差があり、持病があり、しかも借
 金まみれで、作品に描いた通りの賭博癖が未だに
 治っておらず、先妻の連れ子や亡くなった兄の遺族
 など扶養家族もどっさりいるドストエフスキーは、
 二十歳の娘が結婚相手に選ぶにはおよそ理想的
 ではない相手だったが、その彼のプロポーズを受け
 入れたのである。それもドストエフスキーが、彼女の
 助けと救いを切実に必要とする状態だったからと
 いうことがあるだろう。

 それほど酷いじょうたいだったからこそ、真の救い
 手と出会えたのである、逆を考えてみれば、トル
 ストイのように成功した作家で、財産にも地位にも
 恵まれていたなら、アンナのような存在に出会えた
 だろうか。
 
 家に居場所をなくした老トルストイは、駅のベンチ
 で亡くなった。結婚から13年後、妻や家族に優しく
 見守られて臨終を迎えたドストエフスキー。アンナ
 という支えを得たことは、ドストエフスキーにとって
 人生最大の幸運であった。内助の功により、借金
 を次第に返済して、ついに貯金ができるまでにな
 る。長年、取り付いていた賭博癖さえも、アンナの
 支えによって遂に克服できた。

 愛着の安定化が、重度の賭博癖にさえ終止符を
 打つことを可能にしたのである。アンナという安
 全基地を得たことで、ドストエフスキーは自らの
 愛着障害を遂に克服できたといえるだろう。

 ※ 『回想のドストエフスキー』(アンナ・ドストエフスキー)