阪神大震災メモ #22014/03/30 19:09

「もう一つの大震災、「夫婦の絆」がちぎれたとき」
(北村年子、『現代 ’96、11』)


発災後から7月までの間に兵庫県立女性センターに寄せられた相談件
数は10,553件。その内、人間関係を巡る相談666件の9割が夫婦間の
問題で、殆どが妻からのもの(震災前の3倍)。

震災離婚:陽子さん一家は、翌日、ガラスの割れた自家用車で岡山の
彼女の実家に向かった。実家にたどり着き、暖かい部屋と食事、お風
呂が用意され、一家も次第に落ち着きを取り戻した。けれども、彼女は
神戸の惨状を知るにつれショックが深まり自分の今いる場所とのギャッ
プに罪悪感を募らせていた、そんな時に、一緒にテレビを見ていた夫が
放った一言を「絶対に許せんかった」。
「避難所にいる人たちはしてもらうばっかりで、自分たちは何もしようと
しない。甘えてるって。そのとき、あ、やっぱり私、この人嫌いじゃ!っ
て思った。それは安全で暖かい場所にありついた私たちが絶対いっち
ゃいけんことやと思った」

「(街を見ながら)本当にヒドイことが起こったんだ、死んでいても不思
議じゃなかった。私は偶然生き残れたんだって。・・・もう自分を誤魔化
して生きるんはイヤじゃ、って」


社宅に残された女と子ども:幸枝さんは、「震災直後、私と子供たちを残
して会社に行ってしまった夫へのわだかまりが、今もぬぐいきれない」と
いう。・・・地震発生の約1時間後。午前7時にはもう、社宅中の男たちが
背広に着替え、ネクタイを締め、一斉に歩いて会社へ向かった・・・

彼女の両親はその後、仮設住宅の抽選にも外れ、他府県の公営住宅
で暮らしている。そこは来年3月までの期限付き。家を建て直すには相
当の金額がいる。

「女、働いていない、小さい子がいる、ということで身動きが取れない自
分が悔しい・・・こんな状況でとても離婚なんて言い出せない」と肩を落
とす。

「こんな私から見れば、震災離婚する人の一部は甘い、まだ余裕があ
るんだと思う。実家や故郷っていう心の拠り所が無傷だった人とは、遠
い距離を感じます」


避難所内レイプ:「痴漢、のぞき、女性下着の盗難、また大人たちが出
払ってしまった日中、体育館裏で小さな子どもがパンツを脱がされた
り・・・突然数人の男たちが乱入し寝ていた女性がレイプされ、止めに
入った教師も殴られケガをした」

「マスコミはボランティアの美談ばかりを報道してきましたが、実際、数
多くの被害が出ています。でも事実を訴えて公表すれば、自分の生活
がとても守れないという人たちばかり。・・・また警察や行政も街のイメー
ジを悪くしたくないためか、情報は持っていても黙殺しているのが現状
なんです」


「人の絆も決裂も、光も闇も、この震災はくっきりと映し出し、あらゆるも
のを露呈させた。・・・復興という名の「日常」に街が戻っていく中で、人
々の意識から風化させてはならない光と闇が、今も生まれ続けている」

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