琴の琴2006/09/25 18:07

源氏物語には、琴の琴、筝の琴、和琴、琵琶などの楽器
に託して語られているシンボル・コードがある。
琴の琴を演奏するのは皇統の人たちで、君子の楽器とさ
れる。物語では、桐壺帝から光源氏へ、源氏からは(明
石の)二ノ宮へと伝えられるのであろう。一方、和琴は
藤原氏の系統で、頭の中将一族という具合である。薫が
柏木の子と見破られるのもその音色のゆえであった。
光源氏と頭の中将との政治対立は楽器の違いでも表され
ている。

しかし、琴の琴は奏法が難しくて、源氏物語が書かれた
頃には既に奏者が居ないという状況であった。ここから
物語の制作年代を推定することも行われている。

そんな琴が奏されるというので、取り壊される能舞台で
の最終公演にお邪魔した。
その音色は、私の想像を超えていた。風が竹林を吹き抜け
ればそのざわめきは恐ろしく、葛の葉を揺すれば一枚、
一枚が音をたてる。大地も震えているような錯覚に陥った。
「左手は絃を押さえる・・・」と事典には出ていたが、
左手も絃を掻き鳴らしていた。

こんな企画に感謝、感謝である。