『オリエント考古美術誌』1997/01/20 08:24

杉山 二郎『オリエント考古美術誌』NHKブックス386

いささか古い本(昭和56年)なので、コンテクストを追うのに
骨が折れました。しかし、読後感はズシンとありました。

西アジア世界における文化形成を考えるには、南北軸と東西軸
とがどのように絡み付いていくのかを紐解いていかなければな
らない、と著者は主張する。これらの両軸に絡む民族として、
ベドウィンの可能性を探り、論考を進める。そのときに、遊牧
性と海洋性を表と裏の関係にある、いわば一体のものであるこ
とに、著者は注目している。ベドウィンが海に乗り出す契機となっ
たものに「香料の道」がある。香料の最大消費地エジプトに向け
て、アラビア半島からレバント経由で海路運んで行く。そのような
移動のうちに各要素が収斂されて、フェニシアンの謎解きに通じ
て行く。フェニシアンは、この貿易従事者のエジプト人との混血者
であるというのである。彼らは、エジプト社会から追い払われた。
それであるがゆえにエジプト文化を濃厚に宿しているのである。

その後、ヒッタイトが北から南北軸を下りて来て、カナン人が
東西軸を東へ進み、それらのうねりが第一次のアッシリア帝国
へと刺激を与えて行ったと解説される。

細部的には分からないことが多いのですが、大きな流れを描いた
ことに刺激を受けました。